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HiLシステムで行うバッテリテスト

HiLシステムで行うテストでは、物理的なレベルでも電気的なレベルでもバッテリの代わりにリアルタイムシミュレーションを使用するので、短絡、重放電、過熱などといった極限的な条件のテストも安全に実施できます。しかも、マウスを数回クリックするだけで劣化シナリオやばらつきも各セルの挙動に正確に再現できます。実際のバッテリを調整するために余計な時間をかける必要はまったくありません。

LABCAR-MODEL-BAT(Hilテスト用リチウムイオンバッテリのシミュレーションモデル)

このモデルの特性

ETASのLABCAR-MODEL-BATシミュレーションモデルは、複数のセルで構成されるリチウムイオンバッテリを、各バッテリセルの状態の明示的なシミュレーションで表現します。セルの数は自由に選択できます。

このモデルの長所

リアルタイム対応のLABCAR-MODEL-BATは、バッテリの主要な電気的特性をすべて網羅しています。リチウムイオンバッテリ内の各セルの静的プロセスおよび過渡プロセスをきわめて正確にモデリングしています。個々のセルをパラメータ化できるので、各セルの充電状態(SoC )を高精度に推定して最新のバランシング技術をテストすることができます。さらに、LABCAR-MODEL-BATではクリティカルな動作状態をモデリングして障害認識、緊急停止、漏れ検出などの機能をテストすることもできます。

モデルはSimulink®で実装されているので、すべてのモデルパラメータに自由にアクセスできます。モデルの最下層レベルはSimulinkのS-Functionだけで実現されているので、アドオンや修正が可能です。

モデリングしたいバッテリの計測データが存在する場合は、それを使用してシミュレーションモデルのパラメータ化を自動で行うことができます。モデルパラメータはこのデータに基づいて、実際のコンポーネントとモデルとが最大限一致するように自動的に設定されます。

モデルの構成

バッテリの各セルの定常挙動は、セル電圧(無負荷)と充電状態の関係を通して表現されます。通常、この特性カーブはセルの製造者により定義されるので、パラメータ化を容易に行うことができます。

LABCAR-MODEL-BATはセルの充放電時のセル電圧のダイナミクスをモデリングします。このプロセスでは、各セル内の容量効果と抵抗性効果が考慮されます。1つ1つのセルの特性が個別にモデリングされ、まさに実際の自動車を使用しているかのように各セルのさまざまな充放電特性を表現することができます。これにより、バランシングアルゴリズムとSoC推定アルゴリズム(カルマンフィルタなど)を包括的にテストでき、製造上のばらつきや分散を各セルの挙動に取り入れることができます。

このモデルは複合的な関係さえも捉えることができます。充電電流と放電電流の強さの変動が原因でセルが過熱し、さらに、内部抵抗は温度に依存するので、セルの挙動が変わることになります。この影響をマッピングするために、このモデルにはさまざまなバッテリ形状の熱力学効果とある1つの電力消費モデルが組み込まれています。この電力消費モデルは自己放電電流や化学に基づくセル挙動も考慮して実証的アプローチに基づいて作られているので、ユーザーはきわめて容易にこのモデルをパラメータ化して重要な効果をもれなく組み込むことができます。

さまざまなレベルのテスト

一般に、テストはBMSコントローラソフトウェアのテストとセル監視回路(CSC)レベルのテストの2種類に区別されます。

BMSコントローラソフトウェアのテスト(BMS: バッテリ管理システム)では、CSC端子を除くBMSのすべての電気的インターフェースはHiLシステムに接続されます。BMSとCSCの間の通信はデータインターフェース(CANやI2Cなど)経由で行われ、BMSの他の電流および電圧センサを容易に操作できるので、実際のバッテリの大電流や高電圧は完全に回避することができます。バッテリとCSCのシミュレーションは、CSC計測技術の分解能が限られていることも考慮したモデルによって行われます。

CSCレベルのテストでは、実際のCSCがHiLに接続されます。したがって、HiLシステムのバッテリセルシミュレータ(BCS)には実際のバッテリの電圧とバランシング電流(充電イコライゼーション)が存在します。ETAS LABCARは、高精度の電流ソースおよび電圧ソースをLABCAR-MODEL-BATと結合することにより、バッテリの各セルをシミュレートします。CSCレベルのテストでは、HiLシステムに以下のように高度な要求が課せられます。

  • 200超のセルをリアルタイムにシミュレートするために、並列計算で高速入/出力インターフェースを用いて高いスループットを実現すること
  • 5Vのセル200個からなるバッテリのセルエミュレータを使用して、最大1000Vの電圧差を表示できること
  • アクティブバランシングテスト用に最大8Aの電流を供給すること
  • 個々のセル電圧を、どのような場合でも1mVより高い精度で設定できること
  • リーク電流および静止電流を検知するために、電流をμA単位まで正確に計測できること
  • バランシングアルゴリズムを検証するために、置換された充電量を計測できること(クーロンカウント法)

LABCAR-HiLシステムはモジュール式アプローチとBCSセルシミュレータによりこれらの要求に対応しています。ETAS LABCARは、PCベースのシミュレーションターゲットであるLABCAR-RTPCを使用するうえオープン性も備えているので、将来の要求にも対応できます。このテクノロジーは、自動車に使用されるリチウムイオンバッテリの潜在性能を安全に解き放ちます。