ラムダのクローズドループ制御について
O2プローブ(別称ラムダセンサ)は、車の排ガスに含まれる酸素濃度を測定します。空燃比あるいはラムダ値(λ)は、化学量論的な空燃比を示すもので、エンジン燃焼室内の空気と燃料の重量比を決定します。λ=1が成り立つとき理想的な燃焼状態とされ、供給される空気は不足も過剰も生じません。λ< 1では空気量不足(リッチな混合気)、λ> 1では空気量過剰(リーンな混合気)となります。標準的なラムダのクローズドループ制御では、火花点火エンジンの燃焼のために、計算上の燃料に対する空気の理想比率である化学量論的なポイントに非常に近づけた状態で維持しようとする制御(ストイキ制御)が行われます。このプロセスで、三元触媒コンバータが理想的に動作するための最適な割合で、排ガスが混合されます。
ディーゼルエンジンや直噴型のガソリンエンジンでは、高負荷から低負荷に至る広範囲でリーン燃焼が行われ、燃焼温度の上昇に伴い窒素酸化物(NOx)が急激に増大します。排気を再循環させる技術により、燃焼温度を下げることが可能となり、さらに燃焼室に入る窒素が少なくなるためNOx発生も低下させる効果があります。(ただし相反してPMが発生しやすくなるため、あらゆる運転条件に応じた最適制御が必要となります。)排ガス燃焼の過程で発生したNOxは、リッチ燃焼の過程で無害の窒素に変換されるまでの間、ストレージ触媒コンバータに貯蔵することで、排ガス浄化を図ることができます。ラムダ値は、排気の再循環と触媒による汚染削減の両方に対応する、セットポイントの制御値を表します。ディーゼルエンジンでは、最高負荷時における排気の黒煙限界を設定するための基本的な値として、ラムダ値が使用されます。
ラムダセンサの原理
ラムダセンサの動作原理は、酸化ジルコニウムの有している酸化物イオンが高温下で電導する性質に基づいています。バイナリタイプのセンサでは、ネルンストの式を利用したセル部の誘導電圧が測定され、理想空燃比を中心とする狭い領域で、酸素濃度の変化に対する極めて精密なレスポンスが検出されます。従来型のラムダ制御では、触媒コンバータの前後にバイナリタイプのセンサが設置され、それぞれ導入プローブ、制御プローブとして利用されます。ワイドレンジラムダセンサの装着により、より精密な最適化制御が実現され、オンボード診断の一環として触媒機能の監視も行われます。
ワイドレンジラムダセンサの場合、ネルンストセル内のテストガスの酸素濃度は常に、λ=1に設定されます。これは、テストガスへ酸素イオンが流入あるいは流出するポンピング電流によって実現されます。ポンピング電流の量・方向により、たとえストイキ制御にならない燃焼が生じた場合でも、ラムダ値の正確な測定が円滑になされます。ワイドレンジラムダセンサをメインに使用した場合、酸素濃度はリッチやリーンに制御され、燃料噴射量が多い場合は薄い混合気に、少ない場合は濃い混合気にというように働きます。ワイドレンジラムダセンサが提供する計測技術により、空燃比制御の適用範囲は拡大されます。
Bosch社製ワイドバンドラムダセンサLSUは、600℃以上の温度下で安定的に動作します。当LSUセンサは、排ガス最高温度930℃、短時間ピーク温度1030℃以下のデューティサイクルで連続使用できるように設計されています。センサ内蔵のヒータ制御により、車が始動して数秒後にセンサの作動が開始されます。ヒーティング効果により、センサ信号の排気温度による影響は最小限に抑えられます。