
ETAS LABCARは、Vモデルの全開発工程をサポートしているETASツールファミリの一環を成しています。LABCARは、組込み制御ソフトウェアの検証・評価を行うテスト環境を提供し、開発初期の段階から、コンポーネントモデル(MiL: Model-in-the-Loop)や、既存のソフトウェア(SiL: Software-in-the-Loop)、接続された物理ECU(HiL)のテストに幅広く対応します。また、ECUのデータ適合に影響を及ぼす測定・適合工程のツールとの連携も可能です。
LABCAR システムは、世界で数百以上のシステムが実際に稼動しており、以下に挙げるような開発プロジェクトにおいて制御/診断機能の統合およびテストに活用されています。
- エンジン制御
- トランスミッション制御
- アンチロックブレーキシステム(ABS)
- エレクトロニックスタビリティプログラム (ESP)
- 電気油圧式ブレーキシステム(EHB)
- アダプティブクルーズコントロール(ACC)
- アクティブフロントステアリング
- シート/ ウィンドウ制御
成功事例:LABCAR HiLテストシステム

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LABCAR-RTPC:10年先を見据えた第一歩
2004年1月、ETASがLABCAR-RTPCのバージョン1.0を発表した際、多くの業界関係者が驚きを隠せませんでした。標準的なPCがハードウェア・イン・ザ・ループ(HiL)テスト用の高性能シミュレーションターゲットになるというソフトウェアを今までまったく想像し得なかったからです。その後、当時の常識を覆したこの製品は確固たる地位を築きました。このオープンなアーキテクチャにより、急速に進歩するPCプロセッサ技術を確実に生かすことができます。 - 優れたテストアシスタント
Bosch Gasoline Systems(ガソリンシステム事業部)のテストドライバーは、音声バーチャルアシスタントからの指示を受けながら、運転操作に100%集中してテストドライブを行うことができます。また、計測アシスタントはすべての主要データを保存し、目標値からのズレも漏らさず記録します。テストケースはLABCAR-AUTOMATIONに読み込むことでHiLシステムでの使用も可能です。これにより、定型テスト実施工数を大幅に削減し、テスト車両の使用効率を高めることが可能です。 - 適合業務用の標準開発ツールとしてのLABCARシステム
Bosch Diesel & Gasoline Systems(DGS:ディーゼルガソリンシステム事業部)は世界中のソフトウェアテストおよび納品後テストにLABCARを使用しています。また、このシステムは機能強化されたLABCARモデルを使用し、標準的な乗用車向けにパラメータ設定がなされています。この「バーチャルテストビークル」を使用すると、必要な計測の一部をテストベンチではなくHiLシミュレータで行えるようになります。LABCARの使用により初期適合作業が可能となり、機能的な相関性およびワーストケースシナリオを開発の早い段階で見極めることができます。その結果、テスト車両もしくはテストベンチでの計測が不要となるか、あるいはそれらの計測データをより効果的に利用できるようになります。 - HiLテストにおけるドライビングダイナミクス
CarMaker®をETAS LABCARテストシステムに統合することで、急勾配や氷上、制限速度超過域などといった、高度な動的機能およびリアルタイムな運転操作をテストプロシージャに組み込むことができます。 - 相乗効果を生み出すオープン性
チームのサポートにより、個々の力を合わせた以上のすばらしい成果を生み出すことが可能ですが、これは開発ツールについても言えることです。その好例として、ETASがPreScan、CarSim、MATLAB®/Simulink®、およびLABCAR-RTPCを結合して日本のお客様に提供したことがあげられます。ETAS LABCAR-RTPCのオープン性により、非常に使いやすく、高精度、かつ高い柔軟性を兼ね備えた、優れた高性能リアルタイムテストシステムを実現可能です。 - 実際の内燃エンジンとハイブリッド仮想コンポーネントの結合
多くの自動車メーカーは、排ガス抑制および燃費向上のためにパワートレインのハイブリッド化を進めています。そのプロセスでは、内燃エンジンと電気モーターを適切に制御し選択的に動作させることが重要になります。ウィーン工科大学では強力なインターフェースを使用して実際の内燃エンジンをETAS LABCARシステム上のハイブリッド仮想ドライブコンポーネントに結合することで、リアルタイムフィードバックループを作り上げました。これにより、各種制御パラメータの影響をきわめて高い精度で評価できるようになります。 - 24時間体制の高電圧テストシミュレーション
675ボルト以上の高電圧における電動システムのテストでは、テスト装置に特別な配慮が必要です。AVL Software und Functions GmbHは、内燃エンジン、トランスミッション、車載用ECU、バッテリ、および電気モーターの現実的なモデルを独自に開発し、それらをLABCARマルチコアHiLシステムに統合することにより、実際の電圧をまったく使用せずに高電圧バッテリ制御の信号レベルのテストを行えるようにしました。このため、バッテリマネージメントシステムのほとんどすべての機能をラボ環境で安全に開発し、テストすることができます。また完全自動で1日24時間、週7日の操作が可能です。 - 転倒の危険とは無縁の二輪車テスト
アンチロックブレーキシステム(ABS)の安全上の有用性は二輪車では特に大きく、ますます多くの二輪車にABSが搭載されるようになってきました。しかし、実車を用いての二輪車テストは、時間もコストもかかるうえ、どんなに経験豊富なテストドライバーであっても操作ミスや不適切な適合により転倒する恐れがあるため、容易に実施できない場合があります。ETAS LABCARのHiLソリューションは、入力をハードウェア信号により模擬しながら実ECUをテストします。このソリューションを二輪車シミュレーション環境であるIPG MotorcycleMaker®と結合することで、薄氷上の運転や高速時のブレーキングなど、考え得るほぼすべての環境およびシナリオについて、テストドライバーを危険にさらすことなく検証が可能です。 - 大型商用車のテスト
米国の大型商用車メーカーであるNavistar社は、テストベンチおよびテスト車両でのテストや評価にかかる高いコストを下げる必要性を感じていました。ETASはNavistar社と協力して、LABCAR-AUTOMATIONをベースとする自動反復テストの設計および管理を行うためのHiLベースのテストフレームワークを開発しました。このフレームワークはモデル・イン・ザ・ループ(MiL)およびソフトウェア・イン・ザ・ループ(SiL)のシミュレーションにも使用できます。このフレームワークの特長は、ラボで行うソフトウェアテストおよび機能テストのカバレッジを高められることや、テストベンチおよび実車でのテストを行う前に課題を認識できるようになることなどです。また、自動反復テストによりソフトウェアテストのサイクルタイムも10分の1に短縮できます。 - 掘削機の仮想テスト
オフロード車の各種モデルはあらゆる環境条件で活用されていますが、コールドチャンバーを必要とする実際のテストなどでは、車両のサイズが妨げとなってテストが実施できなくなる場合もあります。エンジンの開発を行っているAVL社は、量産車の適合をサポートするために数年前からHiLアプリケーションを採用してきました。今日では、最終的な量産データの適合をラボ内で行うこともできるようになりました。これが実現できたのは、AVL社のモデルベースのエンジン最適化手法(MoBEO)のおかげです。この「バーチャルシリーズキャリブレーション」を使用すると、時間とコストの削減が可能です。また、あらゆる種類の環境条件をシミュレートできるため、適合の質も向上します。 - 船舶用ディーゼルエンジン向けの調速機
船舶用ディーゼルエンジンの設計では、燃料消費の低減と排出ガス組成の最適化を実現する方法を検討することがこれまで以上に重要になっています。中国の武漢理工大学の実験チームでは、ETASツールを使用して船舶用ディーゼルエンジン向けの電子調速機を開発しています。ETAS LABCARは電子調速機の制御開発や、アクチュエータのテストで威力を発揮しています。 - ETAS LABCARによる視覚フィードバックテストの実現
ディスプレイパネルを使用する最新の組み込みECUのテストは、実施するのが困難なうえ時間もかかります。視覚フィードバックの中には、メーター針の角速度などのように人間の目では客観的に読み取れないものがあります。また、洗濯機の残り時間表示のような機能のテストは、手動で実施するにはあまりにも時間がかかりすぎます。ETASは、視覚フィードバックをキャプチャするためのカメラシステムとETAS LABCAR HiLテストシステムおよびETAS LABCAR-AUTOMATIONソフトウェアとを一体化したコンパクトなリアルタイムマシンビジョンシステムを提供しています。これにより、画像取得をI/O信号とミリ秒単位の精度で同期させられる上、完全自動のテストプロシージャを一晩中あるいは週末に実行することができるようになります。
……成功事例はこれからも続きます!